2010年03月16日
幻の雪
その日、ペーターはとても忙しかった。
夕方に大分で仕事をこなし、トンボ帰りして日出で打ち合わせを2件
外は雪に変わっていた。
最後の打ち合わせを行なったメンバーを別府のネオン街まで送り届け、一日のスケジュールから開放されたのは日付が変わる前だった。
このまま帰宅するには気が引けたので、いつものマスターの顔を見に行くことにした。
クルマなのでキープしてあるマッカランはまたまたおあずけだ。
店の前へ出る角を曲ろうとしたとき、見覚えのある顔がこちらを見ていた。
「アラ、ペーターさんじゃないの、これからアチラ?」
彼女は今まさにタクシーに乗り込むところだったのだが、私の為についさっき席を立った店に戻ってくれた。
店でとりめのない話をし、冷えたウィルキンソンのジンジャーエールで喉を潤して帰る事にした。
タクシーに乗り損なってまで私に付き合ってくれた彼女を家まで送っていった。
「帰りたくないの」
なんて言われたらどうしよう?と思ったりもしたが、今日のペーターにそれに応えられる気力は残っていなかっただろう・・・
別府の深夜、旧やまなみはうっすらと雪化粧していた。
明礬温泉に登るR500に入ると、雪は更に車道を塞ぎ、かろうじて轍にはそこが道路であると分かるように黒いアスファルトが見えた。
「マズイ」
ペーターのクルマは4輪駆動とはいえ、タイヤはかなり磨り減ったノーマルタイヤだった。
行ける所まで行くしかなかった。

パチン
ペーターは普段使う事が無いある装置のボタンをオンにした。
インパネにオレンジ色の光が灯った。
長野オリンピックで使われていたというペーターの車には「雪道モード」のトラクションコントロールが備わっていたのだ。
山を登るにつれ、雪はどんどん深くなっていった。
雪のために乗り捨てられた車があちこちにあった。
十文字原にまで上ってくると、既に積雪は5センチを越えていた。
車のモニターに外気温0度の表示が出た。
ここで0度という事は、ペーターの自宅では更に低いという事だ、それは降り積もっている雪が「全く解けていない」事を意味していた。
ミュージックカフェ「光の詩」がある十文字原までは、ずっと登りが続くのだが、ここから先はアップダウンとなる。
登りではある程度クルマをコントロールする事ができたが、滑り始めたノーマルタイヤのクルマはほぼコントロール不能となる事をペーターは知っていた。
下りに差し掛かった時、ペーターはATミッションをドライブからセカンドホールドに切り替えてゆっくりと走って行った。
最大の難所はR500から離れて日出JCT下へもぐり込み日出方面に抜ける為の急坂だ。
慎重にゆっくりとドライブ、こんな深夜に走っているクルマは居ない。
高速道路とて閉鎖されているから、付近には誰一人として居ない、事故を起こしても誰も助けには来てくれないのだ。
途中でブレーキを踏んだ、即座にABSが反応する
ザザザッ、ザザザッ、ザッザッザッザッABSによってブレーキがリリースされると急速なポンピングブレーキ状態となる、クルマの姿勢を維持してゆっくりと坂を下った。
急坂を下ると高速道路の真下に側溝へタイヤを落したクルマが放置されていた。
ドライバーはドコへ行ってしまったのだろう?
坂を下ると今度は上りだ。
アップダウンを何とかしのぎ、地元の地区まで辿り付いた。

あと半分・・・・
距離からすれば8割は進んでいた。
しかし、本当の難所はここから先なのだ。
雪は更に深さを増し、ここから家まではずっと上り坂なのである。
幸いなことに轍はあった、たった1台だがペーターの前に誰かがこの道を走っている、その轍をたぐるようにペーターは登りへ突入した。
「頼む、止まるな」
雪の上り坂でノーマルタイヤで停止することは、2度と前進できないことを意味する。
一度平坦なところまで下がって再び勢いをつける以外に登り続けることは出来ない。
坂の半分まで来た、幸いタイヤはまだスリップしていない、これだけの深さの雪、グリップしている訳はないがAWDの威力で辛うじて騙し騙し前進しているだけなのだ。

最後の分起点を曲ると、ここでも運が味方した。
轍は1本あった。
クルマを発進させようとするとタイヤが空転してクルマが斜めになった。
セナ足でアクセルのオンオフを繰返し、スノーモードTCSのアシストもあってクルマは進み始めた。
時速20キロ・・・
止まってはいけない、スピードを出してもいけない。
自宅に向かって道路を曲ると・・・

そこには未踏の白い道が続いていた。
翌日の夕方
雪は姿を消していた。
幻の白い平原
お金では
買えない価値が
山にはある。
外気温は-4度だった・・・
夕方に大分で仕事をこなし、トンボ帰りして日出で打ち合わせを2件
外は雪に変わっていた。
最後の打ち合わせを行なったメンバーを別府のネオン街まで送り届け、一日のスケジュールから開放されたのは日付が変わる前だった。
このまま帰宅するには気が引けたので、いつものマスターの顔を見に行くことにした。
クルマなのでキープしてあるマッカランはまたまたおあずけだ。
店の前へ出る角を曲ろうとしたとき、見覚えのある顔がこちらを見ていた。
「アラ、ペーターさんじゃないの、これからアチラ?」
彼女は今まさにタクシーに乗り込むところだったのだが、私の為についさっき席を立った店に戻ってくれた。
店でとりめのない話をし、冷えたウィルキンソンのジンジャーエールで喉を潤して帰る事にした。
タクシーに乗り損なってまで私に付き合ってくれた彼女を家まで送っていった。
「帰りたくないの」
なんて言われたらどうしよう?と思ったりもしたが、今日のペーターにそれに応えられる気力は残っていなかっただろう・・・
別府の深夜、旧やまなみはうっすらと雪化粧していた。
明礬温泉に登るR500に入ると、雪は更に車道を塞ぎ、かろうじて轍にはそこが道路であると分かるように黒いアスファルトが見えた。
「マズイ」
ペーターのクルマは4輪駆動とはいえ、タイヤはかなり磨り減ったノーマルタイヤだった。
行ける所まで行くしかなかった。

パチン
ペーターは普段使う事が無いある装置のボタンをオンにした。
インパネにオレンジ色の光が灯った。
長野オリンピックで使われていたというペーターの車には「雪道モード」のトラクションコントロールが備わっていたのだ。
山を登るにつれ、雪はどんどん深くなっていった。
雪のために乗り捨てられた車があちこちにあった。
十文字原にまで上ってくると、既に積雪は5センチを越えていた。
車のモニターに外気温0度の表示が出た。
ここで0度という事は、ペーターの自宅では更に低いという事だ、それは降り積もっている雪が「全く解けていない」事を意味していた。
ミュージックカフェ「光の詩」がある十文字原までは、ずっと登りが続くのだが、ここから先はアップダウンとなる。
登りではある程度クルマをコントロールする事ができたが、滑り始めたノーマルタイヤのクルマはほぼコントロール不能となる事をペーターは知っていた。
下りに差し掛かった時、ペーターはATミッションをドライブからセカンドホールドに切り替えてゆっくりと走って行った。
最大の難所はR500から離れて日出JCT下へもぐり込み日出方面に抜ける為の急坂だ。
慎重にゆっくりとドライブ、こんな深夜に走っているクルマは居ない。
高速道路とて閉鎖されているから、付近には誰一人として居ない、事故を起こしても誰も助けには来てくれないのだ。
途中でブレーキを踏んだ、即座にABSが反応する
ザザザッ、ザザザッ、ザッザッザッザッABSによってブレーキがリリースされると急速なポンピングブレーキ状態となる、クルマの姿勢を維持してゆっくりと坂を下った。
急坂を下ると高速道路の真下に側溝へタイヤを落したクルマが放置されていた。
ドライバーはドコへ行ってしまったのだろう?
坂を下ると今度は上りだ。
アップダウンを何とかしのぎ、地元の地区まで辿り付いた。

あと半分・・・・
距離からすれば8割は進んでいた。
しかし、本当の難所はここから先なのだ。
雪は更に深さを増し、ここから家まではずっと上り坂なのである。
幸いなことに轍はあった、たった1台だがペーターの前に誰かがこの道を走っている、その轍をたぐるようにペーターは登りへ突入した。
「頼む、止まるな」
雪の上り坂でノーマルタイヤで停止することは、2度と前進できないことを意味する。
一度平坦なところまで下がって再び勢いをつける以外に登り続けることは出来ない。
坂の半分まで来た、幸いタイヤはまだスリップしていない、これだけの深さの雪、グリップしている訳はないがAWDの威力で辛うじて騙し騙し前進しているだけなのだ。

最後の分起点を曲ると、ここでも運が味方した。
轍は1本あった。
クルマを発進させようとするとタイヤが空転してクルマが斜めになった。
セナ足でアクセルのオンオフを繰返し、スノーモードTCSのアシストもあってクルマは進み始めた。
時速20キロ・・・
止まってはいけない、スピードを出してもいけない。
自宅に向かって道路を曲ると・・・

そこには未踏の白い道が続いていた。
翌日の夕方
雪は姿を消していた。
幻の白い平原
お金では
買えない価値が
山にはある。
外気温は-4度だった・・・
Posted by ペーター at 01:13│Comments(6)
│山暮らし
この記事へのコメント
すごい!
臨場感いっぱい!
臨場感いっぱい!
Posted by pepe at 2010年03月16日 07:59
新雪ってこわいよね^^;
スタッドレス買ってないんかえ?w
スタッドレス買ってないんかえ?w
Posted by ちちぞう at 2010年03月16日 11:59
pepeさん
いやぁ実際ヒヤヒヤモンでした。
ちちぞうさん
まさかここまで積もるとは思っていなかったので、スタッドレス換装していなかったんですよ。
で翌日は換えたかって?
翌日の昼にはレコードラインはノーマルでも走れるようになっていたし、夕方には路面の雪はほぼ消滅でした。
いやぁ実際ヒヤヒヤモンでした。
ちちぞうさん
まさかここまで積もるとは思っていなかったので、スタッドレス換装していなかったんですよ。
で翌日は換えたかって?
翌日の昼にはレコードラインはノーマルでも走れるようになっていたし、夕方には路面の雪はほぼ消滅でした。
Posted by ペーター at 2010年03月16日 16:03
オーー、あの日はこんなだったんですね?ワタシだったら崖から落ちますばい。
Posted by MILKHALL at 2010年03月16日 21:25
「今日は帰りたくないの・・・」
20年前なら、その台詞も有効かな?
20年前なら、その台詞も有効かな?
Posted by とみ at 2010年03月17日 22:29
マスター
ミニだったら落ちる前に亀さんになっちゃって動けなくなるかと・・・
おとみさん
まだまだイケてください
ミニだったら落ちる前に亀さんになっちゃって動けなくなるかと・・・
おとみさん
まだまだイケてください
Posted by ペーター at 2010年03月17日 23:02